風博士のコラム
  
世界の風力発電
風力発電と局地風
ナンセンの北極探検船と風力発電

荒川 正一
アラカワ ショウイチ

気象大学校助教授、気象研究所主任研究官、広島気象台長、東京家政大学教授を経て、現在CRCソリューションズ顧問。理学博士。
岡田賞受賞(1999年)
主な著書「局地風のいろいろ」2000 成山堂


ナンセンの北極探検船と風力発電

ノルウェーの海洋学者F.ナンセンが、12人の隊員と共に北極探検を挙行したのが19世紀も終りに近い1893〜1896のことであった。ナンセン達が乗ったフラム号は、北緯79°、東経133°付近で氷野に閉じ込められた。ナンセンとヨハンセンは、食糧とカヤックを載せた犬橇を犬達に曳かせて、フラム号をあとに北極点を目指した。そしてついに86°13.6’と前人未踏の最高緯度に達した。

ところで、このフラム号が風力発電施設を積んでいたことは余り知られていない。船の走行中は発電機エンジンで動かしたのだが、停泊中は前甲板に風車を取り付けこれを発電の動力源としたのである。この風力のことはナンセンの探検記「極北」の随所で出てくるし、写真にも残っている(図1参照)。ヨーロッパで風力発電が始まって直ぐの頃であったようで、ナンセンの進取の気性を示すものであろう。フラム号の風力は現代と比ぶべくもなく、未熟で「その日の風向きに応じて風車を回したり、風が余り強いときには風車に登って風車の帆を縮めたり」など結構世話がやけたらしい。 しかし夜の長い極夜の生活の中で、明るい電燈の光は隊員達の心を和ますのに大いに役立ったようである。

F.ナンセン著,沢田洋太郎訳「極北」上、下 福音書店



図1

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